星に願いを・・・
壮大な宇宙にテーマを絞った随筆(エッセイ)集です

 
星に願いを・・・Part24(ハレー彗星 その2) 2004/04/11
 「ハレー彗星」の話題・その1では、過去2回(1910年と1986年)に大接近した様子を紹介しました。 しかし、この彗星はもっと古くから約76年の周期で地球にやって来ています。ただ昔の人々は、あま りに長い周期(人の一生に等しい)の為に、同じ彗星が再び回帰してきたとは気付かなかったようで す。今でこそ、「ハレー彗星」と名付け親である「エドモンド・ハレー」の名が付いていますが、それは、 この彗星がある周期で太陽の回りを公転する軌道を計算した結果です。もう少し詳しく触れてみまし ょう。
 彗星は、古代より人類にとって不可思議な存在でした。惑星や星座と異なり、突如としてあらわれ、 いつしか消えていく予期せぬ天体で、地域によっては幸福を招く星であったり、災いを呼ぶ不吉な前 兆であったりしました。しかしその正体は、17世紀になっても謎のままでした。
 彗星が惑星と同じように、太陽のまわりを公転していることを発見したのは、イギリスの天文学者エ ドモンド・ハレー(1656〜1742)でした。そのきっかけは、1862年に出現した巨大な彗星で、彼が26歳 のときでした。彼は彗星の出現に非常に驚くと同時に深い関心を寄せて、その動きを克明に記録し ていきます。
 ちょうどそのころ、ハレーより14歳年上で彼と親交のあったニュートンが、万有引力について研究し ていました。ニュートンは、もし彗星が回帰してくるのなら長楕円軌道をとり、回帰してこなければ放 物線軌道をとるということを示唆しました。
 そこでハレーは、自分が観測した彗星の軌道を克明に計算します。さらに当時記録が保管されて いた24の彗星について調べてみると、1531年と1607年に出現した彗星の軌道が、自分が観測した 彗星とよく似ていることをつきとめ、この彗星が1758年暮れから1759年始めにかけて再びあらわれ ることを予測したのです。
 1758年のクリスマスの晩に、ドイツのアマチュア天文家が小さな彗星を発見しました。これこそがハ レーが予言した彗星そのものでした。残念なことに、ハレーは1742年に亡くなっていて、その事実を 確認できませんでしたが、人々は彼の功績をたたえて「ハレー彗星」と名づけることにしました。
 ハレー彗星は、惑星とはまったくちがった天体ですが、同じ太陽系の仲間であり、決まった周期で 公転する天体であることが初めて確認されました。彗星は、人類にとって長い間、謎の天体でした が、今日では太陽系の誕生の解明をにぎるきわめて重要な存在であると考えられています。その意 味でもエドモンド・ハレーの発見は、今日の天文学にとっても非常に大きな功績ということができま す。
 彗星の正体は、僅か直径数キロから数十キロメートルのゴミ混じりの氷と考えられています。太陽 に近づいたときのみ、太陽とは逆の方向にガスを吹き出し、その姿から「ほうき星」と呼ばれていま す。因みに、次回の「ハレー彗星」の接近は2061年7月となります。まだ50年以上も先の話ですが、 小さな彗星であれば、今月か来月にも見ることができそうです。



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