星に願いを・・・
壮大な宇宙にテーマを絞った随筆(エッセイ)集です
星に願いを・・・Part16(水星 その2) 2004/02/28
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太陽系・第1惑星の水星には、Part11で取り上げた特徴以外にも面白い現象が見られるので、急
遽、「その2」として水星編の続シリーズを掲載しました。
水星の軌道は非常に扁平です。近日点は、太陽から僅か4600万kmのところですが、遠日点は、
7000万kmのところになります。水星の軌道は太陽を焦点とする楕円ということになります。楕円は円
に近いものから直線に近いものまでいろいろありますが、楕円の形を表すには離心率(e)という指標
が用いられます。この指標を求める複雑な計算式がありますが、今回は省略します。 e=0は円、 e
=1は放物線です。水星の e は他の惑星に比べて特に大きくて0.206です。
e の値が大きいということは、水星が軌道上を運行する速度が近日点と遠日点とで25%くらい異な
る現象を生み出します。Part11でも取り上げましたが、元々水星の自転速度はゆっくりとしています
(水星の1日は地球でいう59日)。その結果近日点では、軌道の角速度が自転の角速度を上回ると
いった事態が生じます。簡単にいえば、水星が近日点を通過する日は異常に昼間が長くなるという
ことです。実際にどうなるかというと、水星上で太陽を見ているとすると、日は昇ってから、また戻った
方向に沈み、再びもとの方向に昇っていきます。
詳しく観察すると以下の様子になるでしょう。
ある朝、太陽が昇りだした。その後ゆっくりと天頂に向かいながら、次第に見かけの大きさが大きく
なっていく。そして、天頂で太陽は止まり、一時的に引き返していく。その後、再び地平線に至り太陽
の見かけの大きさが小さくなる前に、もう1度止まった。この間、恒星は3倍の早さで空を横切って行
った。
まったく奇妙な1日である。だからこそ宇宙の神秘を研究することは面白い。仮に、水星に古来か
らの生物が居たとして、彼らにとって太陽の逆行する日が1年に1回あることは普通の現象になる。
むしろ地球上の現象の方が変と感じるだろう。
水星には、アインシュタインの「一般相対性理論」でこそ説明のつく宇宙の不思議があります。機会
があれば続編を掲載します。(MIDI: ホルスト組曲「惑星」より「水星」)
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