星に願いを・・・
壮大な宇宙にテーマを絞った随筆(エッセイ)集です

 
星に願いを・・・Part13(金星 その1) 2004/02/14


 言うまでもなく、太陽、月に次いで明るく見える星です。宵の明星、明けの明星として有名なのは、 正しくこの星です。英名は「ヴィーナス」、ギリシャ神話では「アフロディーテ」として、その名も有名で す。
 この星(惑星)は、地球の兄弟惑星として有名でした。その訳は、
@ 金星は地球よりほんの少し小さいだけ(直径は地球の95%、質量は80%)である。 
A どちらの惑星にもほとんどクレーターがなく、表面が比較的 若いことを示している。 
B 二つの惑星の密度と化学組成が似通っている。 
 では、実際の観測結果はどうだったのだろう。最初に金星を訪れた探査機は、1962年の マリナー 2号でした。それに引き続いて、 パイオニア・ビーナス号や、最初に他の惑星に着陸したソ連の ヴェ ネラ7号、最初に金星表面の写真を送信してきた ヴェネラ9号など数々の探査機が訪れています (全部で20以上になります)。 この当時は、米ソの宇宙探査合戦が見事に繰り広げられていた時代 でもあります。米の探査機は、フライ・バイ方式といって、金星の傍を通過しながら金星を上空から探 査しましましたが、片やソ連の探査機は、実際に金星着陸を試みるという玉砕方式。金星探査は、 両国が意地のぶつけ合いを繰り広げる中で、宇宙戦争時代の真っ只中でもありました。因みに、金 星初着陸を成し遂げた「ソ連の ヴェネラ7号」の探査機として機能した期間は僅か1分あまりでした。
 想像を絶する、過酷な環境の報告結果は以下のものでした。
 @金星表面の大気圧は90気圧(地球の海面下1km の圧力とほぼ同じ)。
 A大気の組成は、ほとんどが二酸化炭素。硫酸でできた何kmもの厚さの雲の層がある。これらの 雲は、金星表面を完全に覆い隠している。 
 Bこの濃い大気はとめどもない温室効果 をおよぼし、金星の表面温度をおよそ400℃から740 度℃以上(鉛が融ける温度)に上げている。金星の表面は実際、 水星より 2倍近く太陽から離れて いるにもかかわらず、水星より温度が高いのである。
 地球のように、たぶん金星には大量の水があったのでしょうが、全て蒸発してしまいました。金星 は、今ではまったく乾いています。地球がもし太陽にほんの少しでも近かったら、金星と同じ運命をた どったことでしょう。基本的に似ている金星がこんなにも違うのはなぜかを学ぶことによって、私たち は地球のことについて多くを学ぶことになります。
 組成や、大きさ・質量などが地球と似ていることから、金星は地球の双子星とも呼ばれ、進化の違 いこそ在れ、生命の存在が多いに期待された惑星でした。ところが、詳しい探査の結果、多大な大 気圧と気温は、生命の存在を根本から否定する結果をもたらしてしまいました。
 「人類の夢をも消すような探査なら、しないほうがよかった」
若かりし日の筆者の本音です。
 水と空気に満ちあふれる地球と、鉛をも溶かす灼熱地獄と重圧地獄の金星。その運命の差は一 体何だったのでしょうか。「天体の大きさや組成が同等でも、太陽からの微妙な距離が異なることに よって、生命をもたらす要因を大きく変えてしまう」が、現在の天文学の共通した認識のようです。
 英語では麗しいイメージの「ヴィーナス」ですが、熱に強いはずの機械の探査機が1分間として生き られないような、地獄を例えた代名詞が現在の金星(ヴィーナス)のイメージなのです。(MIDI: ホルス ト「惑星」より「金星」)



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